表現力の育成を目指した校内研修

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~自分の思いや考えを伝え合う子どもの育成のために~

提案者 矢板市立片岡小学校 教諭
見目治美
槇 誠子

1 はじめに

 本校の児童は、声が小さく、自分の思いや考えを伝えることを大変苦手としている。そのため、平成22年度より「自分の思いや考えを伝え合うことのできる子どもの育成」を目指して国語科を中心に学校課題として取り組んできた。また、教職員の表現力アップや指導力の向上を目指して職員研修も行った。さらに、表現する素地を育てるための「らくりん座」を講師とした心をほぐす授業も3年目に入った。
 そこで、児童に表現力を身に付けさせるためのこれまでの様々な取り組みを紹介していくとともに、教職員一人一人の指導力や意識を高めるための校内研修の在り方についても考えていきたい。

2 学校課題における研究授業と授業研究会の取り組み

(1)事前研修

①授業研究の方法
 学習指導案は、低・中・高の3ブロックで検討する。無担の教員もいずれかのブロックに入り、協同で指導案づくりを進める。
②授業研究の内容
 その学習活動・学習形態(授業)によって、子供たちにどんな力が付くのか、どんな力を付けたいのかを考えることで授業を組み立てていく。
・具体物や場面絵などの掲示資料の活用
・思考を深めるための板書やワークシート・ノートの工夫
・自分の考えを「書く」学習活動をスムーズに行わせるための支援
・学習形態(1人・ペア・グループ)の工夫
・学習形態を生かすための「練り合い・練り上げ」のさせ方の工夫
・「言語活動」を充実させるための支援

〈場面絵の工夫〉
〈掲示資料の工夫〉
〈「言語活動」を充実させるための支援資料〉
〈ワークシートの工夫〉

(2)研究授業について

・研究授業は、学校課題研修として年2回実施する。
 2学年を見通した学習指導要領の目標を考慮して、低・中・高の3ブロックによる研究授業を年2回実施することで1学年ずつで全学年が研究授業を行う。
・2回とも要請訪問を実施して、教育事務所及び市教育委員会の担当指導主事より指導を受ける。
・全学年全クラスでの授業を実施して研究を深める。
 全体での授業研究会では1学年1クラスが授業を実施するが、研究授業前に他クラスで同様の授業(プレ授業)を行う。その場合、ブロックで授業参観をする。全体での授業研究会前に同様の授業を実施することで授業のねらいを始めとした授業の視点や改善点をより明確にすることができる。クラスにより、児童の実態が異なることを重視し、展開や支援の仕方を見直して、研究授業に臨む。その場合は、可能な限り、全職員が参観する。このように、全学年全クラスでの授業を実施して研究を進める。

(3)参加者全員が学び合える授業研究会

付箋紙を用いたワークショップ型の授業研究会を実施する。

【授業参観中】

①授業者は指導案(展開)を拡大コピーして教室前廊下に貼付する。
②授業参観者は気付いたこと(緑:学びがうまくいっている点 赤:改善した方がよい点)を付箋紙1枚につき1項目ずつ記入する。
③拡大コピーした指導案(展開)に、自分が記入した付箋紙を時系列で貼る。
付箋紙を貼付した拡大版の指導案→

【授業研究会(分科会)】

①授業者が自分の授業を反省し、授業の意図や児童の反応から困ったこと・変更したこと・疑問が生じたことなどの反省を発表する。
②授業の視点に関わるものや類似の内容の付箋をまとめ、付箋紙が多いところを中心に話題を設定し協議する。
③複数の参観者が気付いた授業の様子を伝え合うことでじっくりふり返り、成果を確認したり、改善の方向性を話し合ったりする。
④指導主事にも分科会に参加していただき、指導を受ける。

分科会の様子
〈授業の視点に関わる部分の検討〉

【授業研究会(全体会)】

①各ブロックごとの分科会で協議した成果や課題等を発表し、情報交換をする。
②授業の視点やブロックで協議した内容を中心に、指導・講評を受ける。
(4)「校内研修だより」による啓発
学校課題に関わる研修の情報を「校内研修だより」を発行して職員に伝え、共通理解をしたり確認したりすることで、日々の授業に生かすことができるようにする。

3 表現力向上のための取組

(1)表現力向上へ向けて指導力アップのための職員研修

①構成的グループ・エンカウンターの実際とその利用についての研修(塩谷南那須教育事務所の指導主事による研修)
・表現力アップにかかせないクラスの雰囲気作りや心を開く手助けとするために
②「話すを磨く」研修(現宇都宮市の校長先生を講師に招いて)
・職員自身がスピーチの仕方を学び、ポイントを押さえた指導ができるように
※今年度は、日本群読教育の会の重水健介先生にお願いして、群読の方法を学ぶ予定

(2)らくりん座による授業

・年間各学年2時間を2回~3回
・児童の心をほぐし、表現しやすい雰囲気作りに。また、教員にとってもその方法を学ぶよい機会に
・昨年度は、声を出すことから群読へ
・今年度は、声を出すための心の開放を目指して

4 成果と課題

(1)成果

①児童
・一人からペア、グループ、全体というように学習形態を工夫した「話す」活動を取り入れることで、それぞれの表現の場が保障され、自分の考えを伝えようとする意欲が高まってきた。
・思考の過程が見通せるワークシートを作成したり、様々な掲示資料を工夫して活用したりすることで、自分の考えを表しやすくなった。
②教師
・全担任がプレ授業・本授業のどちらかを公開研究することで、国語科への理解を深めるだけでなく、指導方法を学ぶ機会となった。
・児童対象の外部講師による表現体験学習や、教職員対象の「話す」を磨く研修などにより、表現力を育成するための技術を得ることができた。
・校内研修を行うことで自分の指導を見直す機会となり、意識の向上につながった。

(2)課題

①様々な取組を行っているが、その場ではできても、いつ、どんな場所でも自ら判断し、実践できない。
②日々の活動への取組における高学年の意識改革とリーダーの育成が必要である。
③家庭・地域との連携がかかせない。
④校内研修の充実と日々の取り組みを続けるための方策を考えていきたい。

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